『氷湖いま』は鈴木総史の第一句集。「群青」・「雪華」同人。序 佐藤郁良、跋 櫂未知子。帯 橋本喜夫。十五句抄。
氷湖いま雪のさざなみ立ちにけり
修司忌の傘をひらかぬほどの雨
街の灯のゆらいで初雪と気づく
粽解く十指を湯気にかがやかせ
海沿ひの屋根のあかるし女郎花
ハンガーに人のぬけがら貝割菜
会ふための夜露の自転車をまたぐ
みづうみに輪郭のある初氷
さやけくて母を起こしにゆくところ
さざなみは船に届かずカーディガン
沸き立つてこその鍋焼饂飩かな
ひとこゑに夜の満ちてくる酉の市
灯を点けて塔の全貌夜鳴蕎麦
あかときの湖は墨色紙衾
メロン食ふたちまち湖を作りつつ
*本著は著者より寄贈を賜りました。記して感謝申し上げます。