『森』は加藤又三郎の第一句集。「鷹」同人。序・小川軽舟。俳人協会会員。十五句抄。
虫の音はかえすことばの浮かぶまで
浮寝鳥夕星滲み出るごとく
後輩の女おでんに泣きじゃくる
年礼や浄瑠璃坂の上の月
春月や斧の重さの赤ん坊
掌を声に翳せる桜かな
サマードレス口約束を忘れけり
八月の森に錨を下ろしけり
少年が母にはためく花野かな
青空の匂いの森をぬけて冬
雪ふるや劇団員に大鏡
種を蒔く硝子のビルの管理人
夕焼を列車傾きだれも魚
押し入れにラックぴったり後の月
*本著は著者よりご恵贈賜りました。記して御礼申し上げます。