2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧
かがまりて夕かなかなをとほくきく 高橋鏡太郎 吾子すでに手におもたしやほととぎす 同上 老幹を冷えのぼりくる落花かな 大嶽青児 ある晴れた日に乙鳥(つばくらめ)かへりけり 安住敦
あをあをと賢治の畑や夏燕 近藤晴子
島に降る雨の明るしかたつむり 五領田幸子 雲海の波頭かがよふ群青忌 今田清三 白足袋を地に食ひ込ませ御輿舁く 川合弘子 空映す広さが湖水ほととぎす 小川軽舟 く
しるしなきけぶりを雲にまがへつつ夜を経て富士の山と燃ゑなむ 紀貫之 眠る山或る日は富士を重ねけり 水原秋櫻子 秋の富士日輪の座はしづまりぬ 飯田蛇笏
貝殻の中の虹色光琳忌 布施政子 水に棲むものは眠らず未草 小坂優美子
『耳澄ます』は甲斐由起子の第三句集。「天為」同人、俳人協会会員。十五句抄。 春耕の人をはなれず群雀 夜雨いつも穂高を濡らすそぞろ寒 感冒のはじめ甘美なる戦慄 艫綱に貝みつしりと白露かな 八ヶ岳月光に虹あらはるる 凍蝶の花びらになりゆかむとす 夜神…
『遠き船』は松野苑子の第三句集。「街」同人会長、俳人協会会員。十五句抄。 地下室の窓を行く足クリスマス 永遠は空の続きや干布団 横に揺れ家鴨が歩く春祭 屏風絵の鯨の上の人の数 十字架に烏のとまる大暑かな サフランやいいえばかりに丸をつけ 吹雪く夜…
村野四郎『亡羊記』(1959年)より 鹿鹿は 森のはずれの夕日の中に じっと立っていた彼は知っていた小さい額が狙われているのをけれども 彼にどうすることが出来ただろう彼は すんなり立って村の方を見ていた生きる時間が黄金のように光る彼の棲家である大き…
ソネット18番 君を夏の一日に喩えようか 君は更に美しくて、更にやさしい
ブランショ 「言語は死を抱き死の中に維持された生なのである」(言語主義的死生観)『文学空間』
『風紋』は広渡敬雄の第四句集。「沖」同人、俳人協会・塔の会幹事。十五句抄。 風紋は沖よりのふみ夕千鳥 氷塊の中から秋刀魚抜きにけり クリアファイル重ねて曇る山は秋 床にさす残心の影夏稽古 心臓のかたちに木の根開きにけり 大海亀空のかなたに去りに…
サルと共存するには まだまだだ 空から降つてきたのは サルの形をした 僕の心だったのかもしれない 片桐英彦
『星々』は松尾隆信の第九句集。「松の花」主宰、俳人協会評議員。十五句抄。 初日いまだし天上はすでに青 うつぼふはりと夏潮の穴に入る 夏怒濤引く波を呑み立ちあがる すべての毛動かし毛虫動き出す 日本は水の国なり初日の出 人日の道頓堀の水の色 影持ち…
『白桃』は岡田和子の第一句集。「馬酔木」同人、俳人協会会員。序・德田千鶴子。十五句抄。 栗飯を待たれてをりて今日は炊く 香水やそれとなくきく子の外出 それぞれの今日を聞きつつ梨を剥く 白萩の揺れゐてそそぐ雨見えず 木漏れ日を胸にちりばめ衣更ふ …
しやぼん玉うかとたましひ吹き入れし 竹腰素 冬ぬくきスープカップに耳ふたつ 松永典子 行く春に花のいのちを眺めをり 五十畑明
風下の氷柱の性根曲りたる 河内文雄 噴水は風とかたらひ人濡らす 同上 篝火の音はじければ鵜の猛る 同上 素足わけ入る靴下の行き止り同上 スプーンに映りて消ゆる春の猫 田口茉於 坂道を巡査下りくる夏燕 同上 玄海の白波臨む手に破魔矢 熊谷蓬山 強気一偏銭…