2024-10-01から1ヶ月間の記事一覧
『批評』 巻頭言 西村孝次 われわれの求め願ふところは宣言ではない、生成である。肯定ではない、懐疑である。狂信ではない、情熱である。詮索ではない、批評である。
『森』は加藤又三郎の第一句集。「鷹」同人。序・小川軽舟。俳人協会会員。十五句抄。 虫の音はかえすことばの浮かぶまで 浮寝鳥夕星滲み出るごとく 後輩の女おでんに泣きじゃくる 年礼や浄瑠璃坂の上の月 立春のピクルスに刺す星条旗 春月や斧の重さの赤ん…
サントブーヴ『我が毒』 「21 批評について」 パリでは、真の批評はしゃべりながら出来上がる
ふるさとは 風に吹かるる わらべ唄 今朝の秋 ふるさとに似たる 風ぞ吹く
懽の歌 春の野のうららの妹よ 相見しはいとど遥けし その月日心に堪えて 今日しもぞ直に逢ひつる 今日しもぞ清に逢ひつる 妹が頬、妹が口もと 薄らひも籠れる眉と 山本健吉
静心柿の一葉の落ちにけり 山本健吉
順徳院「八雲御抄」 おほよどの浦にも今は松もなく、住吉の松にも浪かけず。されどもなほいひふるしたるさぢをよむべし。 かくは思へども、今は又珍しき事どもいできて、昔のあとにかはり、一ふしにてもこのついでにいひつべからむには、やうにしたがひて必…
詩人は常に、自己をより価値あるものに服従させなければならない。芸術の発達は不断の自己犠牲であり、不断の自己の消滅である。エリオット
どうでもいいことを話しかけたくなる人は、どうでもよくない人 黒川伊保子
頂上や枯れ苅萱は雲を切る 森俊人 小春日や音の聞こゆる砂時計 田丸勝 絵葉書の切手のゆがむ秋暑かな 鳥居三枝 籐椅子の亡夫の窪みの浅からず 桝本豊子 千年の杉ある宮の茂りかな 福田記子
ドーナツの穴覗きあひ夏休 城台洋子 秋日照る磨きぬかれし甲板に 緑川啓子 白樺に朝空透きて九月来ぬ 布施政子 法師蝉一途といふは心打つ 馬屋原純子 風紋にわが影を曳く晩夏光 川内谷育代 はらからの世辞や苦言や古団扇 斉藤玲子
酔ふほどに余呉のしづけさ紅葉鮒 大谷弘至 むさし野は見あぐる槻や七五三 水原秋櫻子胸の火を掻き熾したり曼珠沙華 德田千鶴子
生きてあることの嬉しき新酒かな 吉井勇
川の香のふと上がり来る遠花火 植松洋子 かけ出して春光の子となりてゆく 本田巌
廃駅は日と綿虫のただなかに 加藤又三郎 北狐漁船のペンキ剥落す 同上 冬館足音突如として醒める 同上 パーティーの皿を触ってから寒し 同上
白帯が叩く畳や寒稽古 五省人
『革命前夜』は澤田和弥の第一句集。「天為」同人。序・有馬朗人。十五句抄。 うららかな光漏れくる化粧室 木の匙ですくふ黄金の雲丹の山 とびおりてしまひたき夜のソーダ水 短夜のチェコの童話に斧ひとつ 夕焼に一点サン・テグジュペリの機 便所より演歌聞…