『海市』は深川淑枝の第三句集。俳人協会会員。「空」同人。十五句抄。
倒す樹に一礼をして冬木樵
消えてより強く匂へる畦火かな
たてがみに風を飾りて仔馬駆く
陸深く鷗入りきし風邪心地
狼の居し頃の闇ふさふさと
自画像の鎖骨浮き立つ稲光
父葬りきて蜜を抱く冬林檎
清明の朝市に花少し買ふ
赤々と木の挽き屑や鳥渡る
川を打つ雨脚白き祭かな
寝冷して鳥籠の影ある畳
冬隣日をたくはへて鶏まろし
網梳いて漁師老いゆく花とべら
潮の引くところが光る晩夏かな
遠くまでひかる風筋種を採る
本著は著者よりご寄贈賜りました。記して感謝申し上げます。