『バーベルに月乗せて』は今井聖の第三句集。「街」主宰、俳人協会理事。十五句抄。
黒牛の片側ばかり落花付く
灼くる太腿ハードルを倒し倒し
サックスより溢れ拡がり夜の緑
にこにこと雨男来る七竃
夜桜や母呼んで声裏返る
ロッククライミングの青空百合匂ふ
夏逝くや勝利のごとくブラ干され
紅梅の下綽名から思ひ出す
若草に置けばチワワの廻り出す
雨吸つて蜂の骸のふくらみぬ
沈丁やどの階の灯も迎ふる灯
遊んでから名前を聞きぬ額の花
片耳にマスクぶらさげ馬を診る
冬オリオン跳ね上ぐ我を支点とし
*本著は著者よりご恵贈賜りました。記して感謝申し上げます。