愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

今井聖『バーベルに月乗せて』(花神社、2007年)を読む

『バーベルに月乗せて』は今井聖の第三句集。「街」主宰俳人協会理事。十五句抄。

黒牛の片側ばかり落花付く

灼くる太腿ハードルを倒し倒し

サックスより溢れ拡がり夜の緑

にこにこと雨男来る七竃

三月の欅叩きて離任せり

夜桜や母呼んで声裏返る

ロッククライミングの青空百合匂ふ

夏逝くや勝利のごとくブラ干され

紅梅の下綽名から思ひ出す

若草に置けばチワワの廻り出す

雨吸つて蜂の骸のふくらみぬ

沈丁やどの階の灯も迎ふる灯

遊んでから名前を聞きぬ額の花

片耳にマスクぶらさげ馬を診る

冬オリオン跳ね上ぐ我を支点とし

*本著は著者よりご恵贈賜りました。記して感謝申し上げます。