愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

岡田和子『白桃』(ふらんす堂、2024年)を読む

『白桃』は岡田和子の第一句集。「馬酔木」同人俳人協会会員。序・德田千鶴子。十五句抄。

栗飯を待たれてをりて今日は炊く

香水やそれとなくきく子の外出

それぞれの今日を聞きつつ梨を剥く

白萩の揺れゐてそそぐ雨見えず

木漏れ日を胸にちりばめ衣更ふ

橋の名の筆やはらかし十三夜

夜桜や星あふるると誰か言ふ

吊革に夫の嚔を恥ぢてをり

厨灯も今年のわれの影も消す

うすうすと刻を染めゆく酔芙蓉

帯結ぶうしろ鏡や初しぐれ

純白にこころをのせて餅を切る

草尾根と雲とのあはひ黄菅満つ

丸盆に丸餅そなへ春祭

天窓へ湯気押上げて大根煮る

*本著はご家族よりご恵贈賜りました。記して感謝申し上げます。