愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

岡田貞峰『天景』(安楽城出版、2010年)を読む

『天景』は岡田貞峰の第三句集。俳人協会評議員。「馬酔木」顧問。十五句抄。

氷河滝滔々と雲を引き落つる

穂高小屋銀河に倚りて灯を点す

落葉松の琥珀に釣瓶落しの日

白妙の凍鷺は添ふ影もなし

泉声に生れ綿虫の芯あをし

遠雷に絵硝子の使徒蒼く立つ

峠雲垂れて暮雪を篩ふなり

霧氷散る微塵の音の空ふかし

岩尾根の万骨凍てし中に泊つ

鳶舞へる胸の白斑や漁始

踏青や堰の水より野は覚めて

潮騒も夜へ傾けり籐寝椅子

波乗のまつしぐらなる手の翼

吊革の隣の顔も冬夕焼

凍瀧の一碧ゆるむべくもなし