愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

澤田和弥『革命前夜』(邑書林、2013年)を読む

『革命前夜』は澤田和弥の第一句集。「天為」同人。序・有馬朗人。十五句抄。

 

うららかな光漏れくる化粧室

木の匙ですくふ黄金の雲丹の山

とびおりてしまひたき夜のソーダ

短夜のチェコの童話に斧ひとつ

夕焼に一点サン・テグジュペリの機

便所より演歌聞こゆる残暑かな

A.Aと真青き刺繍星涼し

月も星も涼しい今日はパパの絵本

月光に蘇我一族の火を放つ

金秋をぼこぼこうまし豆大福

手袋に手の入りしまま落ちてゐる

眼前を大隈候のインバネス

祖父板前父板前僕鎌鼬

点滴を連れ寒月は父のもの

節分の鬼となりても腰低し