鎮魂歌 西垣脩
それらはまだ青みを深くのこした銀杏の葉
折重なり 死の静謐にひしめきあいつつ
つめたい長い甃のほとりに吹きたまっているのであった
親しい友たち 君らは沈黙の堆積となって
紺青の海のおもてを漂い流れほろびつつ
珊瑚礁のかげのない陰に今もなおたゆたっているのだろうか
そんな筈はない いつまでも
残るということは けれども……
夕ぐれ 僕は始めて空の海というものを見た
ひらたい灰色の雲の下に薄金色に透きとおって
荒れた野の果てにさえざえと泛んでいるのであった
野分のあと 枝に残った葉の意味が
今 君らの死を通して飲みこめてくる……
(昭和二十五年)