愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

植田桂子 第一句集『初ざくら』を読む

『初ざくら』は植田桂子の第1句集。序:德田千鶴子 跋:野中亮介

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15句抄

花うぐひいのちの色をふりこぼし

茶摘女の産毛ゆたかに唄ひけり

水兵の襟もとすがし五月晴

海女小屋にミシン踏む音あたたかし

子遍路のゆたかなる髪束ね発つ

月見草月を待たずに咲きそろひ

草萌や調教の鞭風に鳴り

蟹の背の赤く透けたり地蔵盆

桜炭春呼ぶ色の跳ねにけり

絶筆の子規の糸瓜の花ざかり 

石鎚山へ声切り落とすほととぎす

ジプシーの靴紐あかし小六月

石畳の月影踏みて黒ショール

母の忌や紫苑の日差し高くして

瓦斯灯のひときは蒼し獺祭忌

 

 

 


※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。