愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

『緑の夜』木野ナオミ(2014年.角川学芸出版)を読む

『緑の夜』は木野ナオミの第一句集。春野同人。俳人協会会員。 序 黛執  15句抄。

 

 

浅春の木馬の眼濡れてをり

枝垂るるも天指すものも枯木なる

真つ白なエプロン八十八夜くる

月代の誰か出て行く下駄の音

行く秋の鯉のひろげてゆく日向

 

水鳥を眠らせて日の退りゆく

降る雪のそのまま夢の中に降る

涼しさの音拡げたる轆轤かな

真ん中に枕がひとつ夏座敷

しろじろと川流れゆく無月かな

鳥渡る遠い山ほど明るくて

夕闇の包みきれざる雪達磨

ゆつたりと海に入る河鳥雲に

始まりは囁くやうに祭笛

竹やぶに籠る風音葛湯溶く

 

 

 

 

本著は著者よりご恵贈賜りました。記して御礼申し上げます。