愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

鞆の浦


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親馬のあとあしの辺の子馬ゆく 星野立子 

肌ぬくきまで孕み鹿寄り来たる 山崎ひさを 

春の鹿水のひびきが木の間より 友岡子郷

風強く晴れたる山の落し角 宇佐美魚目

雲上にまだ雪嶺や百千鳥 森澄雄

鶯やうれしきときのなほかなし 安部みどり女

鶯や薬を秤るものしづか 平畑静塔

鶯や明けはなれたる海の色 中川宋淵

雉啼くや胸ふかきより息一筋 橋本多佳子

撃たれたる雉子日輪を放れつつ 橋本鶏二

雉鳴くや風ゆくところ山光り 相馬遷子

雉啼くや日はしろがねのつめたさに 上村占魚

雉子の尾が引きし直線土にあり 田川飛旅子

雲雀より空にやすらふ峠かな 松尾芭蕉

くもることわすれし空のひばりかな 久保田万太郎

雨の日は雨の雲雀のあがるなり 安住敦


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渡良瀬葦焼


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雛の間に寝てたましひの眠られず 大石悦子

明るくてまだ冷たくて流し雛 森澄雄

雁供養星見えぬ夜は海荒れて 成瀬桜桃子

雁風呂や日の暮れ方を波さわぐ 豊長みのる

義士祭日照雨きし坂息はずみ 村沢夏風

 万愚節に恋うちあけしあはれさよ 安住敦

エイプリルフールの駅の時計かな 轡田進

緑の羽根心音奏づ上に挿す 本多静江

どんたくの鼓の音ももどりたる 吉岡禅寺洞

三方に窓ある部屋や大試験 徳川夢声

受験生呼びあひて坂下りゆく 廣瀬直人

校塔に鳩多き日や卒業す 中村草田男

口に出てわれから遠し卒業歌 石川桂郎

山彦を山へかへして卒業す 遠藤若狭男

 


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塩田を雲とへだてて遍路ゆく 阿波野青畝

雲がさびしくて遍路も群つくる 藤田湘子

灌仏や鳶の子笛を吹きならふ 川端茅舎

降り足りて夜空むらさき仏生会 鍵和田柚子

くろがねの丹田ひかる甘茶仏 野澤節子

門前にあをあをと海花御堂 高野素十

うららかに妻のあくびや壬生念仏 日野草城

新雪の浅間燃えたり人丸忌 相馬遷子