遠い日の雲呼ぶための夏帽子 大牧広
衣をぬぎし闇のあなたにあやめ咲く 桂信子
竹の葉の落ちゆく先も竹の谷 鷲谷七菜子
布織ってをり垂直に汗落ちて 中山和子
行春の一人旅にて淋しかろ 大竹孤愁
残り葉の人のけはひに散りかかる 同上
一山の挿頭と見ゆる桜かな 上田日差子
濡れ急ぐ万の雫の花万朶 同上
葉桜に働く袖を捲りけり 小川軽舟
隊列をゆるめぬ墓標夏の雨 同上
虹立ちて墓標は点呼待つごとく 同上
本名をいくたびも書きリラの花 櫂未知子
今日よりは火を手放さむ冷奴 同上
ひとつづつそして全ての袋掛 同上