『瀝』は西嶋あさ子の第五句集。俳人協会顧問。「瀝」代表。十五句抄。
蓮根の穴九つの淑気かな
丹後より丑紅買ひに雪女
降る雪やすぐ香に立ちて胡麻油
降るほどの星をいただき枯木宿
宝恵籠に乗りたやひよいと恋したや
仰向くは燃え立つばかり落椿
花烏賊の腸抜く命剥がすごと
綿虫か欅か生まれかはるなら
薄氷雲の茜を結びけり
存分にほとけと遊ぶ落葉かな
もてなしのまづ香に立ちて焼林檎
一枚の重さの重み古暦
束の間を重ねて一生(ひとよ)梅の花
雑炊や微熱にも似て世に離る
一日了ふ端居の端に母が来て
*本著は著者より寄贈を賜りました。記して感謝致します。