愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

西嶋あさ子『瀝』(瀝の会、2018年)を読む

『瀝』は西嶋あさ子の第五句集。俳人協会顧問。「瀝」代表。十五句抄。

 

蓮根の穴九つの淑気かな

丹後より丑紅買ひに雪女

降る雪やすぐ香に立ちて胡麻

降るほどの星をいただき枯木宿

宝恵籠に乗りたやひよいと恋したや

仰向くは燃え立つばかり落椿

花烏賊の腸抜く命剥がすごと

綿虫か欅か生まれかはるなら

薄氷雲の茜を結びけり

存分にほとけと遊ぶ落葉かな

もてなしのまづ香に立ちて焼林檎

一枚の重さの重み古暦

束の間を重ねて一生(ひとよ)梅の花

雑炊や微熱にも似て世に離る

一日了ふ端居の端に母が来て

 

*本著は著者より寄贈を賜りました。記して感謝致します。