愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

コルドン・ブルー風

秋深し夕月雲にうすれつつ 松本幹雄

捨てたるにあらぬ故郷銀河濃し 長谷川閑乙

山並も田も晴れ渡り稲を刈る 福永みち子

敬老日角のとれたる金平糖 長谷川翠

牛わづか天空の牧閉ぢにける 大森三保子

線香の消ゆるまで佇つ白日傘 鈴木まゆ

鰯雲言はねばならぬ言のあり*1高橋たか子

稲穂波鳥海山を揺り上げて 小森泰子

風呂敷に包むワインや敬老日 藤井明子

葡萄熟れ甲斐の山なみ透くごとし 長谷川祥子

朝焼の伊吹に大夕焼の比良 駒井でる太

滝壺の渦に触れゆく鬼やんま 松田多朗

口笛を吹くや色なき風に乗せ 兼久ちわき

武蔵野の紺碧の空雁渡る 斉木永久

秋立つや明けて紫紺の厳島 大上充子

秋ぐもり物みな翳を忘れたり 一民江

夫の忌の音立てて落つる一葉かな 白井友梨

凌霄花おのれの影へ花布けり 間宮あや子

一舟の出でゆく釣瓶落しかな 大谷昌子

小児科の赤きスリッパ夏休 栗山よし子

秋麗や天空を刺す槍ヶ岳 稲葉三恵子

 

f:id:inamorato:20211102185716j:image

*1:冥福をお祈り申し上げます