秋深し夕月雲にうすれつつ 松本幹雄
捨てたるにあらぬ故郷銀河濃し 長谷川閑乙
山並も田も晴れ渡り稲を刈る 福永みち子
敬老日角のとれたる金平糖 長谷川翠
牛わづか天空の牧閉ぢにける 大森三保子
線香の消ゆるまで佇つ白日傘 鈴木まゆ
稲穂波鳥海山を揺り上げて 小森泰子
風呂敷に包むワインや敬老日 藤井明子
葡萄熟れ甲斐の山なみ透くごとし 長谷川祥子
朝焼の伊吹に大夕焼の比良 駒井でる太
滝壺の渦に触れゆく鬼やんま 松田多朗
口笛を吹くや色なき風に乗せ 兼久ちわき
武蔵野の紺碧の空雁渡る 斉木永久
秋立つや明けて紫紺の厳島 大上充子
秋ぐもり物みな翳を忘れたり 一民江
夫の忌の音立てて落つる一葉かな 白井友梨
凌霄花おのれの影へ花布けり 間宮あや子
一舟の出でゆく釣瓶落しかな 大谷昌子
小児科の赤きスリッパ夏休 栗山よし子
秋麗や天空を刺す槍ヶ岳 稲葉三恵子
*1:冥福をお祈り申し上げます