2024-01-01から1年間の記事一覧
ぶつかられたるはうの蟻俊敏に 阪西敦子 あかつきの夢に雨音ほととぎす 浅川芳直 コスモスやなんでもはひる穹青き 南十二国
『晨風』は中村雅樹の第三句集。「晨」代表。俳人協会評議員。十五句抄。 葺替や丸太結ぶに木をねぢり 注連縄の太きところに燕の巣 草匂ふ夜の簗場となりにけり みづうみは草を打ち上げ明易し やどかりの毛深き脚をちぢめをり 秋高し橋を回して舟とほす それ…
『初葉』は丸谷美砂の第一句集。天為、パピルス同人、俳人協会幹事帯 有馬朗人 跋 坂本宮尾。 十五句抄。 道幅のひろびろとある淑気かな 春光や手掴みにして孕み鯉 谿音のあふるる巣箱架けにけり 遠足のそれぞれの手に潮見表 青嵐それより青く孔雀立つ サラ…
『すみれそよぐ』は神野紗希の第三句集。 現代俳句協会青年部部長。十五句抄。 水脈も葉脈も春てのひらも うちにおいでよ汗くさくてもいいよ ひかりからかたちへもどる独楽ひとつ 鈴を振るやうな日差しやクロッカス 縞馬に羽根を描き足す休暇明け 捨てられぬ…
蚊を打つて講義はじめる漢かな 大木あまり やまがはに雹降る昼となりにけり 小澤實 夕焼の覚め際なにか失ひし 林昭太郎 大きくも小さくもなく初日あり 加藤かな文
青大将に生まれ即刻殺たれたし 宮入聖 桃啜り恍惚の子を啜りたし 同上 原爆を落とされし日やパンにバター 池田澄子
あゆの風いたく吹くらし奈呉の海人の釣する小舟漕ぎ隠る見ゆ 大伴家持
サージェント
湯河原 みこしより高く神輿へ出湯をかける くちびるに滴りの冷え岩の冷え 岩に載る岩その岩に乗る飛蝗 以上 松尾隆信
春の夜はほのぼのあけぬけふもまた思ひくらさむゆく末のこと 土岐善麿
鰯引く沖なる島を引くごとく 本間清 芋虫の逃げ出す方が頭らし 小見恭子 朝顔やトーストぽんと立ち上がり 間谷雅代 急がずに生きて仰げる新樹かな 下田三津子 口惜しさを笑へる齢夏みかん 鈴木恭子 噴水のベンチに憂さを置いてゆく 向井明美
黒竹の丈の涼しく揃ひけり 市村明代 千枚田千の音して水落ちぬ 南光翠峰 一の字に反りて鰰焼かれけり 鈴木しげを 夫婦して訪ふ泉あり風鶴忌 同上
水軍の勢ひの走り神輿かな 曽根薫風 黒揚羽低しおのれを恃む黙 斉藤玲子 おりきたる雲より梅のもがれけり 布施政子
消えてより潮騒高し揚花火 土屋啓 調弦のピッチ高めに夏兆す 伊藤ふみ
石削る手もて茅の輪の編まれけり 植田桂子 山葵田の砂利掻く鍬に水しぶく 渡会昌広
針金のごと夏蝶の脚勁し 橋本榮治 薫風や光れ光れと馬に鞭 西川織子 水無月や青き切子を拭き揃へ 丹羽啓子 遠くゆくつばな流しに流されて 福永みち子
楽譜読む男や月の終電車 今井聖
時の日や天をゆつくり廻す鳶 若井新一 七月十七日 炎天や祖父ありし日の波の音 德田千鶴子
をのこやも名は立てずとも富まずともただひたぶるの生ならばよし 佐川仁一
キツネは多くのことを知っているが、ハリネズミは大切なことをひとつ知っている。アルキロコス
白藤の翳もろともに老ゆるかな 斉藤玲子
武蔵野の闇踏み締めて荒神輿 丹羽啓子 巣立ちたる順に梟並びけり 藤野力 しなやかに獣眠らせ春満月 石田阿畏子
鉄棒に身をしならせて卒業す 那須淳男
夏草の手を切るやうな青さかな 藺草慶子 サーファーに波駆けてきて駆けてきて谷中隆子 竹林に吸ひ込まれゆく花吹雪 岡田貞峰 五月来ぬ芝の起伏の果に海 小野恵美子 楡の芽や昨夜の雨粒みなひかり 橋本榮治 時鳥立夏の水のほとばしり 同上 雨霧の山より明けて…
『枯野』は伊藤強一の第一句集。「海光」同人。序・林誠司。十五句抄。 永き日や遠く聞こえるかくれんぼ 膨らんだ麒麟の鼻や夏来る 梅雨明けや平均台のバック転 耳そば立てて白シャツの調律師 十一月クルスに白き日のひかり 指先のあまる手袋咬んで脱ぐ 海鞘…
引いてゆく長きひびきや五月波 鈴木花蓑 むらさきのこゑを山辺に夏燕 飯田蛇笏
樹も草もしづかにて梅雨はじまりぬ 日野草城
人と居てそびら寂しき白芙蓉 ほんだゆき 谷いまだ動くものなく初音せり小田司
日のかげは青海原を照らしつつ光る孔雀の尾の道の沖 十返舎一九
春がすみいよよ濃くなる真昼間のなにも見えねば大和と思へ 前川佐美雄