愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2024-01-01から1年間の記事一覧

長瀞3

緑陰のとぎれ光の芝生かな 柴田多鶴子 鳰の子の潜りて作る水ゑくぼ 同上 地をはがすごと摘みにけり寒の芹 出石すが代 先生は二丁拳銃水でつぱう 別所琴美 風を切る男なにはの夏羽織 岩下美鈴 夾竹桃骨なき墓を洗ひけり 藤井道 燕の子誰にも代はりなどをらぬ …

長瀞2

時鳥我湖水ではなかりけり 小林一茶

長瀞1

新涼や「五分で初段」すぐ解けて 久留米脩二 丘越えて拡がる牧や晩夏光 渡会昌広

秩父

秋雨や口から朽ちてゆく彫像 雨止みてからの雨だれ花木槿 藪枯し引けばはたてのなきごとし 爽やかにいつでも旅立てるやうに 詰め寄るやうに花葛の正面に その先の標は朽ちぬ葛の花 花野への道を教えてもらはねば 万の手の一つを握り花野ゆく 秋水に真つ暗な…

美の山

今ってYouTubeとかで世界中のハイレベルな超若手たちの映像がすぐ観られる。焦りも憧れも嫉妬も同時進行で、レベルアップのスピードが速い。 松下マサナオ

曼珠沙華 巾着田

ジャズの魅力は音に即興性があり、刹那であることだ 石塚真一

西嶋あさ子 つつぱりの健花束呉れて卒業す

「言葉あれこれ」瀝2018年夏号 シーソーを例に取れば、相手を高くすれば自分は低くなり(尊敬語)、自分を低くすれば相手は高くなり(謙譲語)、自分と相手が同じ高さもある(丁寧語)。

露踏んでいづれ別るる人ばかり 大串章 一生のうち、たった一つの喜びに出会う私のさだめ(ラフマニノフ「リラの花」)

寒川四十九

落葉急生涯賭けしものもなく うきくさや日暮は雨も匂ひして 盛塩の翳り五月の水匂ふ

かがまりて夕かなかなをとほくきく 高橋鏡太郎 吾子すでに手におもたしやほととぎす 同上 老幹を冷えのぼりくる落花かな 大嶽青児 ある晴れた日に乙鳥(つばくらめ)かへりけり 安住敦

酔芙蓉

あをあをと賢治の畑や夏燕 近藤晴子

ヨリドコロ

島に降る雨の明るしかたつむり 五領田幸子 雲海の波頭かがよふ群青忌 今田清三 白足袋を地に食ひ込ませ御輿舁く 川合弘子 空映す広さが湖水ほととぎす 小川軽舟 く

秋刀魚

しるしなきけぶりを雲にまがへつつ夜を経て富士の山と燃ゑなむ 紀貫之 眠る山或る日は富士を重ねけり 水原秋櫻子 秋の富士日輪の座はしづまりぬ 飯田蛇笏

盆の月

貝殻の中の虹色光琳忌 布施政子 水に棲むものは眠らず未草 小坂優美子

甲斐由起子『耳澄ます』(ふらんす堂、2022年)を読む

『耳澄ます』は甲斐由起子の第三句集。「天為」同人、俳人協会会員。十五句抄。 春耕の人をはなれず群雀 夜雨いつも穂高を濡らすそぞろ寒 感冒のはじめ甘美なる戦慄 艫綱に貝みつしりと白露かな 八ヶ岳月光に虹あらはるる 凍蝶の花びらになりゆかむとす 夜神…

松野苑子『遠き船』(角川書店、2022年)を読む

『遠き船』は松野苑子の第三句集。「街」同人会長、俳人協会会員。十五句抄。 地下室の窓を行く足クリスマス 永遠は空の続きや干布団 横に揺れ家鴨が歩く春祭 屏風絵の鯨の上の人の数 十字架に烏のとまる大暑かな サフランやいいえばかりに丸をつけ 吹雪く夜…

朝顔と鹿

村野四郎『亡羊記』(1959年)より 鹿鹿は 森のはずれの夕日の中に じっと立っていた彼は知っていた小さい額が狙われているのをけれども 彼にどうすることが出来ただろう彼は すんなり立って村の方を見ていた生きる時間が黄金のように光る彼の棲家である大き…

シェイクスピア

ソネット18番 君を夏の一日に喩えようか 君は更に美しくて、更にやさしい

西瓜

ブランショ 「言語は死を抱き死の中に維持された生なのである」(言語主義的死生観)『文学空間』

広渡敬雄『風紋』(角川書店、2024年)を読む

『風紋』は広渡敬雄の第四句集。「沖」同人、俳人協会・塔の会幹事。十五句抄。 風紋は沖よりのふみ夕千鳥 氷塊の中から秋刀魚抜きにけり クリアファイル重ねて曇る山は秋 床にさす残心の影夏稽古 心臓のかたちに木の根開きにけり 大海亀空のかなたに去りに…

砺波

サルと共存するには まだまだだ 空から降つてきたのは サルの形をした 僕の心だったのかもしれない 片桐英彦

松尾隆信『星々』(ふらんす堂、2022年)を読む

『星々』は松尾隆信の第九句集。「松の花」主宰、俳人協会評議員。十五句抄。 初日いまだし天上はすでに青 うつぼふはりと夏潮の穴に入る 夏怒濤引く波を呑み立ちあがる すべての毛動かし毛虫動き出す 日本は水の国なり初日の出 人日の道頓堀の水の色 影持ち…

岡田和子『白桃』(ふらんす堂、2024年)を読む

『白桃』は岡田和子の第一句集。「馬酔木」同人、俳人協会会員。序・德田千鶴子。十五句抄。 栗飯を待たれてをりて今日は炊く 香水やそれとなくきく子の外出 それぞれの今日を聞きつつ梨を剥く 白萩の揺れゐてそそぐ雨見えず 木漏れ日を胸にちりばめ衣更ふ …

五十里湖

しやぼん玉うかとたましひ吹き入れし 竹腰素 冬ぬくきスープカップに耳ふたつ 松永典子 行く春に花のいのちを眺めをり 五十畑明

湯西川温泉

風下の氷柱の性根曲りたる 河内文雄 噴水は風とかたらひ人濡らす 同上 篝火の音はじければ鵜の猛る 同上 素足わけ入る靴下の行き止り同上 スプーンに映りて消ゆる春の猫 田口茉於 坂道を巡査下りくる夏燕 同上 玄海の白波臨む手に破魔矢 熊谷蓬山 強気一偏銭…

白魚

数冊の暑さが重くなる鞄 梶原美邦 柱時計のしづかさの鳴る去年今年 同上 留守番の日の風鈴がむきになる 同上 囀りをちらちら落とし居る大樹 同上

今井聖『バーベルに月乗せて』(花神社、2007年)を読む

『バーベルに月乗せて』は今井聖の第三句集。「街」主宰、俳人協会理事。十五句抄。 黒牛の片側ばかり落花付く 灼くる太腿ハードルを倒し倒し サックスより溢れ拡がり夜の緑 にこにこと雨男来る七竃 三月の欅叩きて離任せり 夜桜や母呼んで声裏返る ロックク…

栃木県トラック協会

花や鳥この世のものの美しく 高橋睦郎 いなづまの後朝匂へ稲の花 同上 鶏頭のいうれい立てりあの邊り 同上 明日のこと死の聲に聞け能始 同上 草能の後ろいつより月在りし 同上 『花や鳥』抄

月涼し

ぶつかられたるはうの蟻俊敏に 阪西敦子 あかつきの夢に雨音ほととぎす 浅川芳直 コスモスやなんでもはひる穹青き 南十二国

中村雅樹『晨風』(ふらんす堂、2022年)を読む

『晨風』は中村雅樹の第三句集。「晨」代表。俳人協会評議員。十五句抄。 葺替や丸太結ぶに木をねぢり 注連縄の太きところに燕の巣 草匂ふ夜の簗場となりにけり みづうみは草を打ち上げ明易し やどかりの毛深き脚をちぢめをり 秋高し橋を回して舟とほす それ…