愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

写真

ふじ牡丹園 湯津上

一山の燃ゆる躑躅となりにけり 咲き満ちて牡丹の影なかりけり 葉ざはりの刃ざはりに似て笹粽 鷹羽狩行 帆柱を風駆けのぼる五月かな 同上 理髪師のひぢかろやかに室の花 下山春陽 着ぶくれの人より貰ふビラ一枚 林弓夫 羽子をつく音上にあり下にあり 星樹人 …

なかがわ水遊園

街灯と月との蝕よ天国にあらねば門はたやすくひらく 高良真実

鯉幟

夜神楽の一番遠き星に礼 赤松佑紀 梟のこうえ星々を近づけず 同上 河豚捌く凪を待たずに刃を入れて 同上 面取られ面打ち返す寒稽古 菊地のはら

武具飾る

新緑や鳥啼きのぼるプラタナス

文旦

手袋や会社出づれば一人なる 宮崎淳 冬うらら順路に沿ふは途中まで 佐藤博美

桜野

家出してあなたの部屋で起きる朝マザー・テレサのページをめくる 鳥居

桜湯 空2023年3月号4月号

初凪や女神へ酒の樽を割る 柴田佐知子 寒晴や懸垂の顔歪みだす 同上 薙刀を空へ突き出す飾り山笠 高倉和子 手拭の柄を揃経て夏祭 同上 馬の尾の大きくなびく飾り山笠 同上 いつせいに布巾干さるる祭あと 同上 オートバイ次々止まる卯波かな 中田みなみ 梅干…

たかんな2023年4月号

初泣きに皆返事せり大家族 中村静江 陽を入れて脈打つごとく春の水 高田栄子 なまはげの自動ドアより現るる 嶋広一 寒林を抜けたましひを置き去りに 松倉妙子 跳ねるよな足どりの子ら氷踏む 片山静子 母の死をうべなつてゆく夜の秋 吉田千嘉子

朧月夜

星光は闇払へざる氷かな 高柳克弘 馬上の子父を忘れて風薫る 同上 流木にナップザックと春コート 同上 春風や合羽用意のイルカショー 同上

うすいろの影をいくつも夜店の灯 森賀まり

にぎやかに盆花濡るる嶽のもと 飯田蛇笏 脳味噌をたたらふむなり風邪の神 阿波野青畝 ほうたるの草を離れて遊行かな 京極杞陽 杖とめて光陰花とわれのひま 皆吉爽雨 水澄みて水澄みて人新たなり 星野立子 墜ちてゆく 炎ゆる夕日を股挟み 三橋鷹女 花の雲抜く…

六義園

切株のどこに触れても暖かし 行川行人 懐手海に出ぬ日は海を見て 矢須恵由 鳥つるむ直立こそを樹のかたち 岩永佐保 うしほ濃き午後の海峡つばくらめ 同上

花の雨

京女花に狂はぬ罪深し 高浜虚子

花ミモザ

大悪人虚子忌の椿まくれなうい角谷昌子

ジョエル・ピーター・ウィトキン

顔とは僕らがまだその実体を把握できていない魂の仮面である

cafe bazaar

翼ある陽射しよ受胎告知の日 本多燐 寒中はマスクの息をととのへる 宇多喜代子 立春の噂話に日が射して同上 どこまでも蒼天つづく二月かな 同上 寝付くまで蛙の国の端にをり 若井新一 浮雲に触れむばかりの花辛夷 同上

マイナー・ホワイト

グランド・ティートンズ

種袋

うすうすと晩年揺らす春夕焼 久行保德 日を返す棹や近江の春の水 安原溪游

枯蘆の水に映りて影も枯る 名和未知男 向き合うて茶を摘む音を立つるのみ 皆吉爽雨

みかも山

洩るる音のみな柔らかく秋簾 丹羽啓子 花火師の起居闇より濃かりけり 村上絢子 病蚕の虚空に糸を吐くしぐさ 萩庭一幹 川面に灯の揺れはじむ夕桜 長田輝男 白樺の間に無音の結氷湖 伊藤厚子 俎に色染むるまで刻む芹 高柳満子 晩年の命なほ濃し針始 中山朝子 …

山桜

木瓜を見てをれば近づきくる如し 石田波郷 わがまへに木瓜燃えたてりわが性も 加藤かけい 木瓜の雨ほのかに鯉の朱もうかぶ 水原秋櫻子

花ミモザ

手を伸べていづれと摘むにたゆたひぬ笛にと思ふ清き茎草 雲よむかし初めてここの野に立ちて草刈りし人にかくも照りしか 清潔な自然と、対峙しつつ、それにはじらうごとく触れる人間の心を初々しく描く 人物のかすかな心のゆらぎ 内省的心情、神秘との交信、…

辛夷の芽

依頼者と方針合はぬ夜は幾度寝返りしても心昂ぶる

白衣観世音

紅梅や横顔美しき観世音

春の雪 pollen

山葵田の湧水迅し暮の秋 松田碧霞 山葵田のたかぶる水音冬隣 同上

奄美大島

ガジュマルの木蔭を風と行くならむ

節分

大空に根を張るつららだと思へ 櫂未知子 初磐梯裳裾を湖に濡らしけり 佐久間晃祥 初日受く日毎に祈る神の山 岡崎宝栄子 薺打つひとりに余ることばかり 徳田千鶴子 人日の手に頂きて新刊書 望月百代 添ひ寝して子に初夢を蹴られけり 五十嵐かつ 富士見ゆる所…

寒波来る

鷹とめて瑞山の春夕映えす 飯田蛇笏 春さだかわが前に波崩れたり 大野林火 竹の穂の春立つ光ふりこぼす 水原秋櫻子 早春の門すこしぬれ朝のあめ 及川貞 早春の心光りつ多摩に沿ふ 中島斌雄 梅二月ひかりは風とともにあり 西島麦南 山がひの杉冴え返る谺かな …

四色丼。

梅雨深しサウナに銀の砂時計江見悦子 こだまして雪の崩るる窯火入れ 岡村千恵子 鷹渡るまだ波がしら闇のこし 同上 ひかりつついちまいとなる大干潟 同上

冬至

寒垢離に滝団々とひかり落つ山口草堂 ゆめのなかへ道折れてゆく寒念仏 森山夕樹 大樟の走り根焦がす追儺の火 下村ひろし