栃木
松虫の鳴く夜は松の匂ひかな 沙平
また違ふ香水過る夜会かな 吉田千嘉子 うしろよりよき風のくる土用灸渥美尚作 朝の蝉井戸の周りの濡れて居て 栗原憲司 河馬がばと炎天の水割りにけり 谷口智行 円陣を組んで噴水立ち上がる 頓所友枝 巡礼のリュックをおろす泉かな 大北昌子 子の肩のてんたう…
踊りゆくをどりの指のさす方へ 橋本多佳子 底紅や大絵馬に鷹剥落す 坂口緑志 妻恋へば七月の野に水の音 角川源義 山吹や花散りつくす水の上 正岡子規 猿酒と信ずる猪口をさし出せり 山尾玉藻
朝月を高きに溶かす峠道 松浦敬親 星までの闇の空白蕎麦の花 樋口保 鵙日和水は流るること忘れ 新井秋沙 廃線の草を跨いで墓参せり 同上 石蹴つて秋の夕日に当たりけり 同上 橋桁の古き落書飛蝗とぶ 須田眞里子 昏鐘や篁を萩あふれたる 田中泥炭
高原の夏の小菊を花束に 禰宜田潤市 春を待つ影あるものの命かな 同上
肘張りて新酒をかばふかに飲むよ 中村草田男 青林檎真っ白に剥き青を捨つ 上窪青樹 雲の峰黒板消しの匂いかな 同上 虫籠に溜まるか月の光なら 大島雄作 死ぬ人は吾を忘るる鰯雲 同上
重陽の夕焼を見るいくたりか 阿部みどり女
鈴虫の声水となり風となり堀口星眠 灯かざせば鈴虫移る松の幹 木津柳芽 鈴虫の高音に心つきゆけず 中島秀子 遅月の雲険しくて轡虫 水原秋櫻子 森を出て会ふ灯がまぶし轡虫 石田波郷 朝霧の雨となりゆく草ひばり 冨岡掬池路
芍薬を剪り弔へ身づくろふ 野中亮介
友死すと掲示してあり休暇明 上村占魚 秋扇や高浪きこゆ静けさに 水原秋櫻子 檜原湖 七夕の湖漕ぐ舟を鵜が追へる 同上
海の日の水はじきたる子の背中 市村健夫 男手に育ちし男の子冷し瓜 緑川啓子 ゆづり葉や生きるといふは遺さるる角川春樹 落ちてすぐ風に解かるる落し文 北川みよ子 己が身の短き影や炎天下 石井清一郎 月光に愛されて滝ますぐなり奥坂まや いつさいの音のは…
遠白き峰刃文のごとく雪連ね 岡田貞峰 地吹雪の中を発ちゆく救護橇 根岸善雄 あかつきの沼の面はがし雁発てり 小森泰子 月光に影をあつめて冬の雁 一民江 描き居し仔馬が顔を寄せてくる 藤野力
海の波砕けて鳴らず花大根 中西舗土
星ひとつ出れば星空夏料理 野中亮介上蔟や澄みて膨らむ山の月同上
口開けて鯰のたくる草の上 波の音聞きつつ復習ふ祭笛 あめんぼに張り詰めて居る水面かな
できたての湯葉の甘さよ山眠る どぢやう鍋悪事企むこと楽し 辞書入れて残暑の重さ革鞄 汗の顔力抜くとき笑ひとなる みささぎの水に育ちし稲を刈る 水澄んで影たひらかに湖国かな 雪道の汚れはじめて村に入る 抑へても肩が笑へり黄水仙 降参のごとく手袋干さ…
庭石のひとつが蟇の声を出す 山本一歩 蚕豆のさみどりやさし兄の忌よ 白澤よし子
翳りても曇らざりけり春の水西村和子 春の川奏づるところ照りにけり 同上 蟻が蟻の頭乗り越え穴を出づ 深見けん二 先生は何時もはるかや虚子忌来る 同上 ゆく春や青鮫の声譜に移す 佐怒賀正美 滝桜この世は江戸の彼岸かな 同上 春暁やいつまで回る水車 柿本…
夕顔の音だったのか声だったのか 池田澄子 若芝に影とならざるものもあり 星野高士 輪をゆらし大きな石鹸玉つくる山西雅子 がらがらと山崩しては栄螺選る 南うみを 夏来る榛名十峰色たがへ 木暮陶句郞 どつしりと尻をつけたる菖蒲風呂 仙田洋子
肉親へ一直線に早苗投ぐ 能村研三 星一つ田の面に落ちて遠囃子 上田五千石
枯蘆に曇れば水の眠りけり 阿部みどり女
遠雷や神々の国暮れ残る 野木桃花 いきいきと川波流れ初つばめ 松岡隆子 曇る日の花の白さの匂ふかな 同上 惜春の橋を渡るに振り返る 同上 残桜や山湖音なく暮れゆける 同上
遠い日の雲呼ぶための夏帽子 大牧広 衣をぬぎし闇のあなたにあやめ咲く 桂信子 竹の葉の落ちゆく先も竹の谷 鷲谷七菜子 布織ってをり垂直に汗落ちて 中山和子 行春の一人旅にて淋しかろ 大竹孤愁 残り葉の人のけはひに散りかかる 同上 一山の挿頭と見ゆる桜…
珍しく、裁判所に報道陣がいると思ったらこれか。
指先の広がってゆく初湯かな 山口誠 どちらともつかぬ返事や着ぶくれて 三木節子 大根引く土の鼓動に合はせつつ 猪上ひろみ 掌に酒湿らせて鍬始 古川邑秋 数へ日の地球儀まはしながら拭く 山口桃 火の色が火の色を呼ぶ野焼かな 日下光代 竹の子の山ごと譲る…
真開きに河豚の鰭干す壇之浦 千々和恵美子
精神が曇りそうな時は、孤独でいるのがよい 川端康成 「少年」
仏生会
乃木坂46の4期生。 宇都宮女子高*1の出。 同郷で最も勢いのある人として、個人的に応援している。 でも、写真集は買わない笑 *1:県内屈指の進学校
雛の間に寝てたましひの眠られず 大石悦子 明るくてまだ冷たくて流し雛 森澄雄 雁供養星見えぬ夜は海荒れて 成瀬桜桃子 雁風呂や日の暮れ方を波さわぐ 豊長みのる 義士祭日照雨きし坂息はずみ 村沢夏風 万愚節に恋うちあけしあはれさよ 安住敦 エイプリルフ…